005 デザインは建て主との接点に生まれる [沖田:高井邸のテーブルと照明 第1話]

 

暮らしのイメージを伝えたら形にしてくれた

沖田が建てた高井さんの家を訪ねました。両隣の家と近接して建つのはまさに都市型の住宅ですが、
高井さんは郊外というよりも木や草花に囲まれるような環境に家を建てて住むのが希望だったそうです。
しかし、仕事の都合でそのような場所とは正反対の、広島の市街地に家を建てたのでした。
敷地、立地環境は典型的な都市型のそれですが、住まいのどこにいても、どの開口を眺めても、
必ず緑が眼に入るようなプランをしたということです。

建て主の高井さんは、
「自分たちの生活イメージを伝えたら、沖田が形にしてくれた、という感じでした。
そもそも沖田を訪ねたのは、街でいいと思った家があり、どこが建てたのか調べたら沖田でした。
建築事務所に頼むことも考えていましたが、沖田は土地探しから面倒を見てくれて、
こんなところに家が建つの??? と思ったのがここだったのですが、
似た条件の家を実際に見せてもらうなどして、『よし、任せよう』と思いました」



「変形多角形テーブル」は必然の形

細長い市街地の土地に高井さんのイメージにあった住まいをつくるために、かなり独特な設計の木造3階建てになりました。
奇抜とか変わっているということでなく、高井さんの要望を叶えながら特殊なものにするのでなく、
自然な成り立ちの建築にするというチャレンジです。
相当考え、あれこれチャレンジしたことで得られる「普通の気持ちよさ」があります。

チャレンジの一つが、股旅ワークショップでデザイナーの村澤にチェックしてもらいながら
沖田スタッフがオリジナルでデザインした造作の多角形変形テーブルと、そこに吊るすオリジナルペンダント照明。
はじめは長方形の大きなテーブルを考え、次に素直な形のおむすび型へとアイデアが進展し、家族の会話、動線、
家族がもう一人増えたときのことなど考えているうちに、この変形多角形となったとのことです。
このテーブルを照らすペンダント照明もオリジナルで、シーンに合わせて器具が昇降する機能を備えています。
昇降機構を実現するためのバランサー(オモリの入った滑車)がつくる上で手間がかかったそうですが、
それが良い具合に仕上がると手間や苦労を感じさせないように空間に馴染みます。

家具や照明をオリジナルでつくることについて高井さんは、
「既製品の家具や照明で好きなものはありますが、それが家と合わなければヘンテコな空間になるでしょうから、
こんなふうにテーブルや照明までオリジナルでデザインしてもらうのはとてもいいと思いました。
とくに、テーブルがこういう形になったことは、この家の成り立ちの象徴だと思います。
形自体も気に入っていて、表札をこの形でつくることにしました」



鉄のスイングアーム照明

この部屋にもう一つ、オリジナルの照明器具が作られていました。鉄製です。
壁から緩やかに湾曲したアームが伸びていて、先端でラッパ型に開いてランプシェードとなっています。
高井さんの住まいにしっくり馴染んでいますが、こんな照明、既製品ではまず見つからないでしょう。

こうしたオリジナルデザインの家具や器具をつくり出すことについて、沖田の代表・沖田憲和は、

「家の型があって型に暮らしをあてはめるのでなく、一人ひとりにそれぞれの暮らし方があって、
その暮らしにふさわしい住まいを一軒ずつ考えデザインします。
そうすると、既製品ではどうしてもしっくりこない場合があります。
家具、設備、建て具。建築士と現場監督と大工だけでは家はできないから、
さまざまな専門のプロと繋がってひとつの住まいをつくることが必然になっていく。
プロが集まって一緒につくるからこそのオリジナリティーと
高いレベルを目指すのが股旅社中の目的だと思っています。
明日は、この照明づくりのパートナーになってくれたカモクラフトさんを見学しましょう」