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鉄家具・ウールフローリング・日本の住まい
[杉山製作所]

 

目からウロコのトークイベント

股旅社中の会員メーカー、杉山製作所が開催した鉄家具の展示会「FACTORY展」と、その特別企画として行われたトークイベントに参加しました。
トークは二部に分かれていて、その一幕は堀田カーペットの代表・堀田将矢氏と杉山製作所代表・島田亜由美の対談。堀田カーペットは、 クラシカルな製造設備を維持しながら昔ながらの製法でウールのカーペットを製造するメーカーです。ウールカーペットの特長を取り入れるなら、 ラグタイプでなく床全面に敷き込むウールフローリングが堀田氏のおすすめ。
ウールカーペットと聞いて思い浮かんだことは、扱いが難しいということ。すなわち、「汚れやすい」、「傷みやすい」、「虫がつきやすい」。 これが、まったくの誤解でした。そして、このように誤解している人がとても多いのだそうです。

ウールカーペットの本当の特徴

堀田氏と島田の対談では、ウールカーペットとは何かをじっくり聞かせてもらいました。 堀田カーペットのブランドと製品のことは同社のウェブサイト[ http://hdc.co.jp ]で詳しくご覧になれますが、 この日の堀田氏のトークに沿って理解した要点は――
ウールカーペットは高密度な羊毛繊維を高密度にしっかり織ることで、そもそも汚れがつきにくい特徴がそなわります。 ホコリや食べこぼしの汚れは表面にとどまるため、掃除機やスチームクリーナーで気持ちよくきれいになります。 ウールが汚れやすいというのは間違った先入観でした。
やわらかで気持ちいいウールは、デリケートな素材ではありますが、丁寧なメンテナンスで長く美しく使える素材です。 それは、多くの人が土足で歩き回るホテルなどのフロアに使われていることが、上質さと耐久性を証明しています。住宅なら10年~20年の使用は何の問題もありません。 家具を置いた凹み跡も、スチームメンテナンスで復元します。
防虫については、堀田カーペットの製品は製糸の段階で安全性と効果と持続性にすぐれた防虫加工が施されています。 虫がついたり菌が繁殖しやすいのは、素材に関わることよりも、防虫加工の品質や空間の湿度や通気が主な要因となります。
実演を交えた堀田氏の熱いプレゼンテーションのおかげで、はじめてウールカーペットを理解した思いです。 和室は畳、洋室は木のフローリングが常識と思っていましたが、ウールカーペットを床に敷き込むウールフローリングも、床座生活の日本人ととても相性の良いものです。 ただし、上質なウールカーペットは遊び毛という、セーターでいえば毛玉になる細かな羊毛が浮き出てくるため、 また、室内のホコリが飛散しないようにカーペットの表面に吸着させる効果があるため、 掃除機による毎日の清掃は気持ち良く暮らすためには欠かせない条件だということもはっきりと言及していました。



鉄家具とウールフローリングは相性がいい

股旅社中の会員ビルダーでは、ウールフローリングを採用するケースが増えています。 掃除嫌いを主張する人には不向きですが、手入れを含めて使うことを楽しみながら時とともに愛着が深まるものとして、 股旅社中メンバーの家づくりと相性がいいものだといえるでしょう。
股旅社中では以前、堀田カーペットを見学するツアーイベントを実施し、その際、工場を見学するだけでなく、堀田氏の自宅も見学させてもらいました。 堀田氏は、1年中裸足で快適に過ごせるウールカーペットの魅力を体感、実証するために、浴室とトイレをのぞく家中にカーペットを敷きこんだ自宅に住まわれています。 居室だけでなく、キッチンも階段もウールカーペットが敷き込まれていました。
このツアーをきっかけに杉山製作所の島田は、ウールフローリングと鉄家具の相性の良さを確信し、鉄家具の魅力を伝えていくために、ウールフローリングのことも同時に伝えていこうと考えました。 そして、こうと決めたら一直線に実行に移す島田は、ショールームを拡充し堀田カーペットのウールフローリング空間で製品を体感してもらえるようリニューアルを行いました。
ウールフローリングと同様、鉄の家具も日本の住まいでは一般的とはいえませんが、ウールフローリングに置かれた鉄のチェアやソファに座ると、その魅力が身近に感じられました。 木の家と相性がいいと感じる人も多くいるはず。家具選び、インテリアの素材、住まい方の選択肢が増えるということで、 鉄家具とウールカーペットの出会いがより多くの人に伝わっていくことに期待します。



「暮らしに応える」デザインを探求

もう一つのトークは、ノースランドデザインズ代表、デザイナーの伊藤浩平氏と、股旅社中の会員デザイナー村澤一晃の、デザイナー同士のトークでした。 杉山製作所が鉄家具づくりに関わったのは、伊藤氏のほうが先でした。 鉄だからできること、杉山製作所の技術があるからこそのデザインを追求することをテーマにしたという伊藤氏のお話は、鉄家具の魅力は何かという原点を聞かせてもらいました。
伊藤氏よりも後に開発に加わった村澤は、素材や技術に関しては伊藤氏と同じところに目を向けながら、伊藤氏とは違う役割を務めていくために、それ以外にどこに目を向けるか熟考したといいます。 メーカーの得意を引き出し、今まではできなかった次の一歩をどう踏み出すか、それをメーカーや工務店とがっぷり四つで取り組むのが村澤のデザインワークの特徴ですが、 杉山製作所のデザイン開発では、「鉄家具のあるくらし」にどう応えるかを考え続けていると語りました。
股旅社中の会員ビルダーの住まいに鉄家具が採用されている空間を見ると、たしかに木の家にしっくりとなじんだ佇まいを感じます。 その相性の良さはどこからくるのか、木の家と鉄家具とウールフローリングと、コラボレーションの本質を垣間見ることができたトークイベントでした。