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ワークショップを現場に生かす。
[ さほらぼ・村澤一晃 ]

 
さほらぼがデザイナー村澤一晃と行っている定例ワークショップを取材してきました。同社が村澤とワークショップを開始してから1年と少々。 その成果が形になって現れてきた、ということです。新型コロナ感染対策に配慮して、リモートとリアルの両方を活用して課題への取り組みが滞ることないようにしています。 この日は、リアルのワークショップでした。


山盛りの課題に自然体で取り組む。

ワークショップを開始してから1年少々ということですが、さほらぼではとても多くの課題に取り組んでいました。物件に収める造作ソファ。 サイドテーブルやソファなどオリジナルデザインの家具。彩りのあるコンクリート洗い出しパネル。庭に設置するコンクリートベンチ。オリ ジナル造作キッチンのデザイン。庭を楽しむ装置「SUTON」のブラッシュアップなどさまざまな課題について、密度の高い現場検証と議論 が行われました。1年以上取り組んでいることもあれば、今回キックオフとなったテーマもあります。
課題の多様性にまず驚きましたが、それ以上に感心したのは、いずれの課題も実物件や通常業務とつながっていると感じたことです。何のた めにどんなワークショップを行うのか、何を課題とするのか。与えられて解く問題ではありませんから、股旅ワークショップは答えに辿りつ くことの前に、何を課題とするのかが一番重要なことです。
取材中、いずれのテーマも実践に則したものだということが、スタッフの皆さんの発言や評価の視点から感じられます。開発のための開発で なく、「こうなればいいのに」「こういうものがあったらいいのに」という現場の問題意識がベースにある。だから、課題が多様であっても、 自然体で取り組んでいると感じられたのだと思います。



現場の声、評価が答えを導く。

デザインワークショップというのは、デザイナーに何かのデザインを依頼することではありません。家づくりの専門家と家具デザイナーが、共に試行錯誤を重ねながら新しい何かを生み出す取り組みです。 工務店スタッフだけではできないこと、家具デザイナーだけではたどり着けないところに行くことに価値があります。
さほらぼのワークショップは、現場の声や考え方を大切にしていました。考えたことを現場に持ち込んで、実際につくってみて感じたことがあればその場で変更を試みたりすることもあるようです。 設計の現場、施工の現場、お客様とのやりとりの現場。現場と繋がっているワークショップ。股旅社中活動というのは、会社やスタッフの能力を向上させ、 それがお客様にも喜ばれ、ひいては業績に反映されることが目的です。言葉を飾らずに言えば、儲かることです。収支の数字主体でなく、ものづくりの結果の先にある喜びを、会社とスタッフと顧客にもたらすことが業績につながることです。
やることが決まっている仕事はらくなものです。どうやったらいいか、やることを決めることが仕事の大変さです。通常の業務を担当しながら、開発活動であるワークショップに参加するというのは、 向上したいという意識や感覚がなければできないことだと思います。現場主導で行われるさほらぼのワークショップには、頼もしさを感じました。



さほらぼの強みは、土木。

さほらぼの特徴のひとつに、木造住宅を建てる工務店でありながら、土木部門もあることが挙げられます。土地の造成、基礎工事から造園まで、一貫した社内体制で家づくりに取り組みます。 基礎工事や造園を外部に委託する場合でも、いい仕事をしてくれるパートナーといい関係があれば問題のないことですが、今回のワークショップで、コンクリートを使った庭のベンチや、 コンクリートを彩った洗い出しパネルで住宅製品を開発しようという取り組みを目の当たりにすると、土木スタッフと共に行うワークショップ活動は、まちがいなく強みだと感じました。 同じ屋根の下で働くというか、同じ釜の飯というか、そういう関係があるからこそ取り組めることがあります。
コンクリートベンチは、ちまたに存在するストリートファニチャーのそれとは佇まいが違います。コンクリートの洗い出しパネルが住宅にどう使われるのか、この先の成果が楽しみです。 木造住宅づくりと土木のハイブリッド、を感じたさほらぼのワークショップでした。